来音と千音~たましいの物語4~

愛を追うものは、愛に拒まれ

愛を分け与える者は、愛を与えられる

幾千の時代に、何度も巡り合う魂

互いの、魂を「音」で知る

寄り添うもつかの間

真の愛こそ難多き旅

それが真の道の定めにあり

叶わぬ想い、来世へ継がれる

嘆かわしいふたつの魂

千音は、ここからどうすれば、脱出できるのか必死で考えてました。

最初は、囚われた恐怖心から助けてもらう事ばかりを考えていましたが、自分で抜け出す策を練る事にしました。何故なら、助けに来た来音が、危険にさらされるような事があってはならないからです。

来音は、千音が落ち込んでいるときは決まって「千音は強くて賢いから大丈夫だよ。」といって励ましてくれた事を、思い出したのです。

そして、千音は月の精霊に、来音への伝言を頼みました。

「来音へ 私を探しに来ないで もうあれからどうれだけの月日が流れたのか分からないわ。ここから、出れるか分からない私の事は、忘れて幸せになってね。」

月の精霊は、千音に聞きます。

「本当にそれでいいの?」

千音は、ただ静かに泣いていました。

哀れに思った、月の精霊は千音に寄り添う事に決めました。

この日から、月の精霊と千音は一番の友達になりました。

月から見守れる安全なルートで、逃げ出す事に決めました。

決行の日は、月明かりが良く届く「満月の日」にしました。

さて、来音の時間軸です。

来音は、記憶を失った女性の名前と住んでいた場所を、知ることになります。

服のポケットに、名前と家の所が記されたペンダントを洗濯した時に、発見したのです。

名前は、「紅・べに」で家は、隣村の石職人の村でした。

紅は、なぜそんなに森へ行くのかを来音に尋ねました。

来音は、紅に全てを話しました。どれだけ、千音を愛しているかも。

紅はこう言いました。

「あなたは、きっと騙されているわ。運命の人なら、あなたの前から居なくなるわけないわ。運命の人じゃないから、縁が切れたのよ。あなたをこんなに不安にさせて、きっとその女は蛇に違いないわ。私はあなたを裏切らない。ずっとそばにいてあげる。危険なものは全て私が取り去ってあげるわ。私こそあなたの真実の愛の相手なのよ。だから神が私たち二人を巡り合わせたのよ。神を裏切る事なんてできないわ。お願い私から、離れないで。その女は魔物なのだから。一緒に幸せになりましょう。いつまでも、過去を追うなんてあなたの両親や、友人がみんな心配するわ。辛いだろうけど、あなたを不幸にさせる縁もきっとあるのよ。」

来音は、もう千音を忘れた方が良いのではないかと思い始めました。

確かに、紅の言う通り、千音が居なくなってからは、自分の殻にこもりきりでした。どれだけの友人が自分の元を去った事か。真実の相手なら、自分に幸福感を与えてくれるに決まっていると、紅の意見に賛同したのでした。

来音の様子を見に来た月の精霊は、千音の涙の訳が分かった気がしました。

月の精霊は、千音の元に帰りました。

千音は「来音が今日も幸せでありますように。」そう言って祈りを捧げていました。

月の精霊は、この時、初めて泣きました。

精霊たちは、誓いに背くことはありません。しかし人間は、意図も簡単に誓いを消し忘れてしまう無情さに、精霊たちは心を痛めるのです。

何も知らない千音は、月の精霊を優しくいつまでも励まし続けました。

さて、この後も、運命の歯車は容赦なく千音に痛みを与えるのでした。

続く

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