竹友と明子~魂の愛~

『必ず裏切られるんだ』

人には、不思議な記憶がある。魂に刻まれた記憶だ。今世で、どうしても拭えない負の意識体というものが、存在している。霊魂は浄化しているのに、未浄化のような意識体。

神の道具である高級霊団のガイダンスに狂いはない。

意識を、高層界に繋げていきガイダンスに全てを委ねる。電気が走るとともに、時空が歪んだように、大きな波動波がうねり合わせた意識は、過去世へと繋がる。

どうやら、ひとつ前の過去世のようだ。

海の音が聴こえる。しばらくすると、神社の前で誰かと楽しそうに話していた。

「男性の名前は?」

「たけ・・とぅ・・?たけと・・?たけ。とも。竹友。」

「女性の名前は?」

「明るい子で、お父様が付けた名前・。お父様は憲兵様。あきこ。明子」だった。

もっと、深い意識に入りそうになり、涙が堪え切れずに恐怖心が襲ってくる。

「大丈夫、大丈夫。」

冷静さを取り戻し、現世の意識がガイダンスに信頼を示す様に頷いた。

海に辿り着いた、ひとりだった。ずっと何かを待っている。ずっとずっと。真っ暗な海を眺め何かを待っている。

訳が知りたくなった。

そうすると、呼吸が荒れ、全速力で走っているのが分かった。涙が瀧の様に流れ落ち、震えている。呼吸はどんどん荒くなった。

「どうしたの?何から逃げているの?」

「大きな音!爆発音。人が弾け破れる音。肉体がちぎれる断末魔、悲鳴、怖い。怖い。怖い。」

燃え崩落する大きな音。うめき声。耳が裂ける様な爆弾の音を振り切るように、全速力で走り抜けていた。

走って、走って走って。。何のために、どうしてここに来たのだろう。

目の前には、また真っ黒な海が広がっていた。ここはかつて、竹友さんと音連れた場所だ。いつも、海を散策してから、神社で、お弁当を一緒に食べて、たわいもない話に花を咲かせていた。

ずっと、一緒にいれると信じていた。

こんな世の中で、ふたりで過ごせた時間は何よりもかけがえのない時間だった。

「当番でない時は、絶対に勤め先に出向かないでちょうだい。何か、嫌な気がするの。お願い。絶対よ。お願い。約束して。」

「世界をひっくり返しても、君との約束だけは、破らないよ。またここで会おう。」

互いに、相手を想う気持ちは会うたびに募り、それと共に世は戦争を突き進んでいた。誰もが、飢えと恐怖で気が狂いそうだった。

いつ終わりを迎えるのか?もう、次は会えないかもしれない。

次こそは、想いを打ち明けよう。

そして、また呼吸が荒れる。

走っても、走っても恐怖が襲ってくる。

「どうして、いないの?どうしていないの?」

竹友は、当番以外の日に、どうしてもと、頼まれ海兵の仕事に出かけた。様子を見るだけだからと、家族には心配かけまいと黙って家を出た。

「約束の日には、間に合うのだから。例え時間が掛かっても、必ずお嫁さんとして迎えに行くからね。」

そう、心の中で、明子に誓い。足早に勤め先に出向いた。

お国からの情報以外のレーダーに映る存在を確認するためだった。

現世の意識で、やはり国は国民に嘘の情報で、欺き続けていたのだと確信した。戦争というのは、敵国から殺されるよりも自国から殺されるものなのである。国民を欺き、敵国に殺させるのだ。

出向いた日。竹友は爆撃に合い死んだ。

その亡骸はふたりでよくいった海の砂浜に放り出されていた。

明子は、待っても待っても、来ない竹友に裏切られたのだと嘆き狂った。

「死ぬときは必ず一緒。必ず約束は守る。必ず会いに行くよ。」

竹友の笑顔はどこにもない。姿も無い。いつもより特別に込めて作ったお弁当を握りしめ、爆撃音と共に探しさ迷った。

「まさか、爆撃が・・落ちるなんて・・。」「どこにいるの?」「どこにいるの?」

せめて、ひとめ会ってから死にたい。

走って、走って、走って泣き叫びながら走っても竹友はいない。

どれくらい走り続けたのだろう?

呼吸が難しい

気付いたら、またあの海の前にいた。辺り一面真っ暗な海。

黒い粉だけが、降っていた。

「私にはね。黒い粉が掛からなかったの」そう言って、私の方を振り返ると、明子は倒れ込み動かなくなった。

しばらくして、ガイダンスが入る

「そこから、光の方へ動ける?」

「光があるのがわかる?」

よく見ると、薄っすらと太陽の光が視えた。でも、怖かった。蠢く感情の波に抗えずに、恐怖で蹲っているのが精一杯だった。

「行けない!」

「海の周囲をよく見てごらん。彼がいるでしょう?」

意識を周囲に移すと、右に海兵隊の格好をした彼が、爆破で即死した様子で大の字に横たわっていた。

「手をよく見てごらん」

自分の手だとは、思わずに彼の左の手にひらに、お弁当が有るのがみえた。

桜色の弁当包みに懐かしさを覚え、そこには贈った黄色のお守りも握りしめられていた。

胸元から、垂れ下がっている白のお守りは自分のものだった。

「その、お守りとお弁当を彼に届けてあげなきゃね?」

「光の扉の向こうに、彼が待っているよ。みえる?」

彼の溢れる笑顔に応えるように、顔を力強く上げ直した。

「早く届けなきゃ!」

大きく走って、彼の元へ飛び込んだ。

大きな光に包まれたと思った瞬間

バァン!!

思いっきり、現世の私は引き戻された。

あの世の門番がお辞儀をして扉を閉める瞬間、神前守護神が、凄まじい力で現世の私を突き飛ばし返したのである。

ちょっと、荒いわぁ・・。

ベットにひっくり返った私は思わずつぶやいた。

魂に刻まれたトラウマというものがある。

現世では、どうしようもない傷、あなたにはありませんか?

魂に生き、魂を辿ると魂が求める、真実の愛に辿り着くのです。

愛は無限の可能性を引き出してくれる。

愛で世界を変える時です。悲劇を繰り返してはならない。

さあ、立ち上がりましょう。

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